肝臓の病気
肝機能障害
肝機能障害とは?
肝臓の細胞が様々な原因によってダメージを受けた状態で、血液検査で肝臓や胆道の数値が異常値を示す状態を肝機能障害を言います。
肝機能障害の原因は?
原因としてウイルス性肝障害(B型肝炎やC型肝炎など)や脂肪肝による肝障害、アルコール性肝障害、胆石、自己免疫性肝障害、甲状腺疾患、薬剤性肝障害など、原因は多岐にわたります。
肝機能障害の症状と検査は?
軽度の肝機能障害であれば、自覚症状がないことがほとんどで、血液検査で初めてわかることが多いです。重度になると全身の倦怠感や食欲不振、黄疸、全身の浮腫などの症状が出てくることがあります。検査としては血液検査と腹部エコー検査で原因を確かめていきます。CT検査やMRI検査も行うこともあります。
肝機能障害の治療は?
肝機能障害の原因となっている病気に対する治療です。原因がはっきりしない場合には肝臓を保護する薬剤を使用することもあります。
急性肝炎
急性肝炎とは?
急性肝炎とは主に肝炎ウイルスに感染することで起こる肝臓の急性の炎症です。
一般的には経過良好な疾患ですが、1-2%は劇症化すると言われています。一旦劇症化すると大変予後の悪い状態となります。
急性肝炎の原因は?
肝炎ウイルスに感染することで発症します。肝炎ウイルスにはA型からE型まであります。A型とE型はウイルスに汚染された水や食事を介して経口的に感染します。B型やC型、D型は血液や体液を介して体内に侵入し感染が成立します。
急性肝炎の症状と検査は?
症状は全身の倦怠感や食欲不振、黄疸、嘔気などがあります。
検査としては血液検査と腹部エコー検査を行います。血液検査では原因の肝炎ウイルスを同定したり、また重症化しないかどうかを調べていきます。
急性肝炎の治療は?
急性肝炎の症状が強い場合は入院し安静加療が原則です。また肝臓への負担を軽減する目的で蛋白を控えた食事をすることもあります。
重症肝炎や劇症肝炎に移行する恐れがある場合には、一時的にステロイドホルモンを使用することがあります。
B型肝炎ウイルスが原因となっている場合、重症化例ではB型肝炎ウイルスに対する抗ウイルス治療を行うことがあります。
慢性肝炎
慢性肝炎とは?
慢性肝炎とは、肝臓の炎症が6ヶ月以上続く病気のことをいいます。主にB型およびC型肝炎ウイルスが原因とされていますが、脂肪肝やアルコールなど、B型やC型肝炎以外の要因による慢性肝炎も増加しています。
慢性肝炎の原因は?
肝臓に炎症が長期間持続することで、肝臓にダメージが蓄積していき肝臓の線維化を起こします。最終的には肝硬変や肝不全に至ります。また肝臓がんを合併したりすることがあります。
慢性肝炎の症状と検査は?
ほとんどは無症状ですが、肝臓の繊維化が進行すると、倦怠感や食欲不振、疲労感などの症状が見られることがあります。
血液検査や腹部エコー検査で経過を見ていきます。肝臓の線維化の評価のため、肝臓に針をさして組織を採取する肝生検を行うこともあります。また肝がんを合併することがあるので、腫瘍マーカーの測定やCT・MRIなどの画像検査を行うこともあります。
慢性肝炎の治療は?
一般的には慢性肝炎の原因に対する治療です。
B型肝炎ウイルスが原因であれば抗ウイルス療法やインターフェロン治療などが、C型肝炎ウイルスが原因であれば抗ウイルス療法が選択肢にあがります。しかし状態によっては肝臓を保護する薬物のみで経過観察することもあります。
脂肪肝
脂肪肝とその原因は?
肝臓に脂肪が多くたまった状態が脂肪肝です。日本では急激に増加し、最近の大規模調査では健診受診者の約1/4で脂肪肝を認めたとの報告もあります。
原因としてアルコール性の脂肪肝と非アルコール性の脂肪肝があります。アルコール多飲が続けば、肝炎や肝硬変に至ることはよく知られていますが、非アルコール性の脂肪肝であっても、同じように肝炎を発症し肝硬変まで進行してしまうことがあります。
この非アルコール性の脂肪肝は肥満や糖尿病、脂質異常症、高血圧などの代謝異常が原因とされており、代謝異常に関連する脂肪性肝疾患(metabolic dysfunction-associated fatty liver disease, MAFLD(マフルド))と総称されます。MAFLDは進行すると肝炎や肝硬変を発症し、肝臓がんを引き起こすことがあります。また肝臓以外の悪性腫瘍の発症リスクが高まるともいわれているので、早期発見のため定期的に血液検査や腹部エコー検査などが必要です。MAFLDはその原因である代謝異常に対する治療が必要となります。お困りのことがあればお気軽に当院へ相談ください。
脂肪肝の症状と検査は?
脂肪肝だけでは特に症状はありません。
検査としては血液検査で肝臓の数値を確認したり、また腹部エコーで肝臓の状態を確認します。場合によっては提携施設に紹介し、肝生検(肝臓に針をさせて組織を採取する)を行うこともあります。
脂肪肝の治療は?
アルコールが原因の場合は禁酒することで最も大事です。
非アルコール性の場合は食事療法と運動療法が基本になります。また原疾患に対する治療も並行して行います。
肝硬変
肝硬変とその原因は?
肝硬変とはB型肝炎やC型肝炎ウイルス、アルコール性肝障害、脂肪肝、自己免疫性肝炎などにより起こる慢性の肝障害が徐々に進行して肝臓が硬くなった状態をいいます。
肝硬変の症状と検査は?
肝硬変の初期は特に症状はありませんが、徐々に進行し肝臓の機能が低下すると、黄疸や倦怠感、腹水や全身の浮腫など様々な症状が現れます。また食道や胃に静脈瘤を形成し、吐血の原因となったりするので、胃カメラで静脈瘤がないかどうか検査をします。肝がんも合併しやすいので、定期的に血液検査や腹部エコー検査・CT検査などを行い、肝がんの有無をチェックします。
肝硬変の治療は?
肝硬変の原因疾患が治療可能な状態であれば、まずは根本治療を行います。
原因疾患の治療が困難な場合は対症療法となります。例えば腹水や浮腫がある場合は塩分制限を行いながら、利尿剤で治療を行います。静脈瘤がある場合は内視鏡治療やカテーテル治療を考慮します。また肝硬変の状態によっては肝移植の適応もあります。
肝がん
肝がんとは?
肝がんとは肝臓にできるがんの総称で、毎年3万人以上が診断されています。
肝がんの中でも肝細胞ががん化したものを肝細胞がんと呼び、肝がんの90%以上を占めています。一方肝臓の中の胆管ががん化したものを肝内胆管がんといいます。(詳細は胆道がんのページを参照ください。)
肝がんの原因は?
B型肝炎やC型肝炎などの慢性肝炎・肝硬変が原因とされています。他には脂肪肝やアルコールが原因となることもあります。
肝がんの症状と検査は?
肝がんによる症状は進行した状態になるまで症状は現れません。慢性肝炎や肝硬変により肝臓の機能が低下してくると、黄疸や倦怠感、腹水や全身の浮腫などの症状が現れます。
検査としては血液検査で腫瘍マーカーを測定したり、腹部エコーやCTなどの画像検査を行います。
肝がんの治療は?
肝がんの治療には外科的な肝切除術や内科的に腹部エコーを用いた焼灼術、カテーテルを用いた血管内治療、化学療法があります。肝がんの状態や肝臓の機能の評価を行い、適切に治療の選択を行 なっていきます。
胆のうポリープ
胆のうポリープとは?
胆のうポリープは胆のう内にできる小さなポリープです。通常は無症状で、健診や人間ドックのエコー検査で発見されることが多いです。
ほとんどのポリープは良性であり、悪性になるリスクは少ないですが、定期的なエコー検査は必要です。急激に大きくなっているポリープや1cmを超えるポリープについては、血液検査やCTなどの画像検査、超音波内視鏡検査などで精査が必要です。悪性の可能性が否定できない場合は胆のうの手術が必要となることがあります。
胆石症
胆石症とは?
胆汁は肝臓で1日に600-1000ml程度作られて、胆管という管を通って十二指腸に流れていきます。
この胆管の途中に胆汁を蓄えておく胆のうという袋があり、胆汁を濃縮します。食事の刺激があると十二指腸に分泌され、脂肪やビタミンの消化吸収を助けます。
胆石症とは胆汁の流れ道のどこかに石ができる病気を指し、胆石のできる部位によって「胆のう結石」、「総胆管結石」、「肝内結石」に分けることができます。日本人の胆石保有率は食生活の欧米化や高齢化などにより年々増加しているといわれています。
胆石症の原因は?
脂質の多い食事や過食、胆汁への細菌感染などが誘因となります。
胆石症の症状と検査は?
胆石症の60-80%の人は無症状ですが、一旦胆石の発作を認めた場合は、再発率が高いといわれてい ます。胆石発作は右の肋骨の下からみぞおちにかけて強い痛みがあります。脂質の多い食事や過食などが誘因となり、30分から1時間程度痛みが持続します。また胆石が胆汁の流れを妨げることがあり、黄疸が出現することがあります。診断としては血液検査や腹部エコー検査、CT検査などで確認することができます。
胆石症の治療は?
症状が出現した場合には治療が必要です。治療としては内視鏡治療や外科的治療があり、胆石ので きる部位によって決定します。当院では腹部エコー検査で胆石があるか確認することができます。過去に指摘のあった方や、何か疑わしい症状がある場合はお気軽に相談ください。
急性胆のう炎
急性胆のう炎とは?
急性胆のう炎は胆のうに生じた急性の炎症です。胆のうが炎症により浮腫が生じて、炎症の進行とともに胆のうの壁が壊死していきます。
急性胆のう炎の原因は?
原因の90%以上は胆のう結石で、胆のう管(胆のうから出る管)に結石が嵌頓し、胆のう内に胆汁が 鬱滞することで胆のう炎を発症します。
急性胆のう炎の症状と検査は?
症状は右脇腹やみぞおちの痛みが典型的で、発熱や嘔気が伴うこともあります。
診断は血液検査や腹部エコー検査、CT検査で診断可能です。
急性胆のう炎の治療は?
治療は内科的に胆のうドレナージ術を行ったり、外科的に胆のう摘出術を行ったり、重症度に応じ
て選択されます。
胆石症を指摘されている方は胆のう炎の発症リスクがあることを知っておくことが重要です。
急性胆管炎
急性胆管炎とは?
胆管は胆汁が流れる管で、肝臓から分泌された胆汁を十二指腸に運ぶ役割をしています。この胆管に何らかの原因で感染が生じた状態が急性胆管炎と呼ばれます。
急性胆管炎の原因は?
急性胆管炎は、胆汁の細菌感染に加えて、胆汁の流れが悪くなり、胆管内の圧力が上がることの両方がそろったときに起こります。胆汁の流れが悪くなる原因には、総胆管結石、肝内結石、良性胆管狭窄のほか、胆管癌や膵頭部癌などの悪性疾患があります。
急性胆管炎の症状と検査は?
急性胆管炎の症状は発熱や黄疸が出現したり、右の肋骨の部分に痛みが生じることもあります。症状が進行すると、意識が混濁したりショック状態になり、急激に状態が悪化することがあります。
診断は血液検査や腹部エコー検査、CT検査で診断可能です。
急性胆管炎の治療は?
急性胆管炎の治療は絶食・輸液、抗菌薬投与です。これらに加えて胆道ドレナージ術が推奨されて います。胆道ドレナージ術は感染胆汁を体外に排出する方法で、内視鏡を用いて行う方法と、体表から針を肝臓にさして行う経皮経肝胆管ドレナージがあります。重症化してショック状態になったり、肝障害が強くなったりした場合には、緊急の胆道ドレナージが行われます。
胆のう腺筋症
胆のう腺筋症とは?
胆のう腺筋症は平滑筋や繊維組織の増生により胆のう壁が肥厚する良性の疾患で、健診や人間ドックの腹部エコー検査で偶然発見されることが多い病気です。病変の局在と広がりによって、限局型・分設型・びまん型の3つに分類されます。胆のう腺筋症と胆のうがんは関連はないとされていますが、十分 な根拠はありません。
胆のう腺筋症の原因は?
原因としてはっきりしたものはないとされていますが、胆のう内の圧が上昇することが原因の一つと考えれています。胆のうの異常な収縮により胆嚢内の圧が上昇すると考えられています。
胆のう腺筋症の症状と検査は?
多くは無症状ですが、胆石や胆のう炎を合併した場合は、腹痛などの症状を認めることもあります。検査としては腹部エコー検査で胆のう壁の肥厚の有無を確認します。またMRI検査やCT検査、超音波内視鏡検査を行うこともあります。
胆のう腺筋症の治療は?
症状がなく、悪性の可能性がなければ治療は不要で、経過観察を行なっていきます。胆石による症 状や胆のう炎を合併した場合には外科的に胆のう摘出術の適応となります。
胆道がん
胆道がんとは?
胆汁の流れ道である胆道は胆管と胆嚢、十二指腸乳頭という3つに分けられます。
胆道がんは胆道にできるがんの総称で、胆管がんと胆嚢がん、十二指腸乳頭部がんに分けることができ
ます。毎年2万人以上が新たに診断され、治療が困難ながんの一つです。。
胆道がんの原因は?
胆道がんの原因は、胆嚢炎や原発性硬化性胆管炎などの慢性的な炎症が原因になったり、先天性胆道拡張症や膵胆管合流異常症などの先天的な病気が原因になることがあります。また印刷工場で使用さ れる化学物質(ジクロロメタン・ジクロロプロパン)が原因となることもあります。
胆道がんの症状と検査は?
胆道がんは発生した部位によって出やすい症状が異なってきますが、初期症状として皮膚や目の白い部分が黄色くなる黄疸や、コーラのような濃い尿になる褐色尿が出現することがあります。その他便
の色が白っぽくなったり、倦怠感や体重減少などが出現することもあります。
検査としては血液検査や腹部エコー検査があります。これらの検査で胆道がんを疑う場合はCT検査やMRI検査を行ったり、また内視鏡を用いた検査などを行います。
胆道がんの治療は?
黄疸がある場合はまずは内視鏡を用いて黄疸を改善する処置を行います。
がんの進行具合によって、外科的手術を選択したり、また抗がん剤を用いた治療を行うことがあります。
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内科 消化器内科
内視鏡内科
院長
森田 幸弘
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